天狗山からの風景(天狗桜)

教授の退任と就任に当たって贈った言葉  

 

 ここ半年の間に、私が日本麻酔科学会理事長の時に理事として一緒に働いた2名の教授の退任と、札幌医科大学教授時代に直接指導した2名の教室員の教授就任があった。

4名の記念祝賀会の挨拶で、彼らの役に立つために言葉を贈った。

 

 1人目は日本大学麻酔科学分野の小川節郎教授で、すばらしい人格の持ち主であった。

中国の明時代の思想家は「立派なリーダーになる条件には3つの資質、すなわち才能、気力、人格が全て揃っていることが必要である。

それらの重要性に優先順位がある」と言った。それは「すぐれた才能を持っているだけでは人は付いてこない。

気力を持っていれば魅力的であるが多くの人は付いてこない。すばらしい人格を持っていると多くの人をまとめ導くことができる」であった。

小川先生にはそれらの条件が見事に揃っており、リーダーとして活躍、実績を挙げた。

この4月から日本大学医学部の研究部門の教授に就くことになっていたので、先輩退職教授として助言した。

それは第二の人生を本格的に歩む前に、身体の検診とオーバーホールをすることだった。

教授時代はアドレナリンを出し切って夢中で仕事をしているため、自分の病気、病状に気付く暇がないものだが、退職して仕事の量や質が軽減すると、心身のバランスが崩れ病気が出現するからである。

 

 2人目は昭和大学麻酔科学講座の安本和正教授で、財務担当常務理事として大いに活躍した。

彼の特性として英語のSではじまる言葉が5つ揃っている。

すなわちSharp=頭が切れる、Smart=賢い、Speedy=仕事が速い、Spirited=活気にあふれる、Severe=他人にも厳しいことである。

この4月から日立市地域の中核病院の院長に赴任したので、病院事業管理者として助言した。

院長と病院職員がお互いに理解し合うには「石の上にも3年」という格言があるように時間と忍耐と根気が必要である。

「人を変えるにはまず自分を変えなければならない」という言葉がある。彼の特性の5つのSのうち3つを変えることを勧めた。

まずSharp=頭の切れる表情は相手に威圧感を与えるのでSmile=笑顔で接する。

Speedy=仕事が速いと相手が付いてこられないので、相手の実力を考えペースをSlowにする。

Severeな態度は相手を委縮させるのでSoft=柔軟に対応する。

そうすることで病院職員を安本院長の考えている方向に導くことができる。

 

 3人目は成松英智先生で、札幌医科大学救急医学講座の教授に就任した。

彼は私の1期生であり、しかも第1号の大学院生として私の叱咤激励によく耐えて成長し、今日に至った。

幸運の女神は成松先生のように明るく、素直で、前向きな気性を持つ者に微笑み、活躍のチャンスを与える。

しかし女神には厳しい面もあり、チャンスだけでなくいろいろな試練も与え、乗り越えられた者にのみ栄光の道を歩ませる。

私は彼がこれからの試練を乗り越えていけるよう激励の色紙を贈った。そこには「英気」と「智力」を並べて縦書きにした。

試練を乗り越えるには英気すなわちすぐれた気性と才能そして智力すなわち知恵と勇気が必要である。

またこの書かれた言葉を横書きで読むと英智、気力となる。つまり成松英智先生が物事を成し遂げるには強い精神力が必要という意味になる。

教授の心得として、日本海軍で最も部下から厚い信頼と尊敬を得た山本五十六大将の「男の修業」の言葉を贈った。

それは組織のリーダーとしての心得であり役割である。

「苦しいこともあるだろう。言いたいこともあるだろう。不満なこともあるだろう。腹の立つこともあるだろう。泣きたいこともあるだろう。これらをじっとこらえてやってゆくのが男の修業である」と述べた。

 

 4人目は山内正憲先生で、東北大学麻酔科学・周術期医学講座の教授に就任した。

彼は私の5期生で、これまでの努力、苦労が実り、縁と運に恵まれてこの快挙を成し遂げた。

私は教授に必要な心構えを「知徳仁義」の4文字に込め、色紙に書いて贈った。その意味は「多くのことを学んで知を施す。

人格を磨いて徳を施す。人を思いやり仁を施す。道理を貫き義を施す」である。

教室の再建という困難な仕事に取り組むに当たり、心掛けることは「自分が何をしたいか」でなく「自分がなすべき必要なことを周囲にたずねることから始める」である。

最近組織再建で注目された人に稲盛和夫氏がいる。

日本航空の再建に乗り込んだ彼は、職員の意識改革を強力に進めるため稲盛フィロソフィーの「六つの精進」を徹底して指導した。

それは「誰にも負けない努力をする。謙虚にして驕らず。反省のある毎日を送る。生きていることに感謝する。善行、利他行を積む。感性的な悩みをしない」ことであった。

さらにこの「六つの精進」はまず社長はじめ幹部職員が率先して行わなければ、職員はついてこないことを強調した。

全職員は彼の熱意と真摯な態度に信頼と尊敬を寄せるようになり、3年という短期間で経営が回復した。学ぶべきことが多くあり、山内先生に稲盛氏の著書を贈った。

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