冬の小樽運河

おたる文学散歩

 

第17話  文学の中の食べ物(広報おたる平成19年11月号掲載)   

 『夏休みなると/おれたちは道ばたの/ざっぱ木を拾い拾い赤岩ポントマルへ/毛コのはえた兄分は褌(ふんどし)/おれたちはふりちん /それっともぐり/一尋(ひろ)二尋きび悪いほど/青い岩肌に/めんこいがんぜ一つ二つ/腹時計がおひるになる/ざっぱ木のたき火に/がんぜのへそをぬいてほうりこむ /こんがり焼けたがんぜが/おれたちのひるめしだ/夕焼けると/みんなの唇は茄子(なす)色/ほら  鴉(からす)が家さかえってくぞ /おらたちもかえるべ/冷えてちぢまりきった/皆のきゅうすを揃(そろ)え/一二の三/おしっこの消火だ/ああ  あのがんぜが/出世して高価高貴の珍重味とは』

 

 この詩は、劇作家八田尚之(はったなおゆき)の「演劇碑」に刻まれた「がんぜ」。子どものころ、海で遊んだときのおやつだった「がんぜ」が、今では高級食材になったという感慨の詩です。「がんぜ」とはエゾバフンウニの北海道方言。ちなみに「のな」とはキタムラサキウニのことです。

 

 八田尚之は小樽生まれ。昭和37年に初演された「ふるさとの詩」は郷里に材を得たもので、小樽の郷土料理屋が舞台になっています。

 

 「がんぜ」と同様にホッキも今や高級食材ですが、昭和2年5月、講演旅行で小樽に立ち寄った芥川龍之介の俳句に次のものがあります。

 

『冴(さ)え返る 身にしみじみと ほつき貝』

 

 この句の後に「このほつき貝と云(い)ふは恐るべきものだ。どこの宿にとまつても大抵(たいてい)膳の上に出現する」と続けています。どうやら東京生まれの芥川の口に北海道の郷土料理は合わなかったようです。

 

 最後に生粋の道産子、伊藤整の食べ物談義を。

 

『味そのものは、私のような人間に取っては、極めて原始的なものでしかない。トウモロコシは畑から取って来てすぐゆでたものがうまい。大根は畑で抜いて、皮をカジって剥(は)ぎながら肩の青い色あたりの一、二寸がうまい。ナマコは海で取って泳ぎながら、シゴいて食べるのがうまい。固く乾いたホシガレイは金槌(かなづち)で叩(たた)いてほぐしたのがうまい。ボウダラは、汗が出るほど力を入れて引き裂いて食べるのがうまいのだ』(「無関心な飲食者」より)

 

 小樽市鰊御殿と八田尚之「演劇碑」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小樽市祝津の高島岬に建つ小樽市鰊(にしん)御殿と、そのすぐ下に建立されている八田尚之「演劇碑」

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