公開日 2020年10月16日
更新日 2023年12月21日
「住宅の高気密化や化学物質を放散する建材・内装材の使用等により、新築・改築後の住宅やビルにおいて、化学物質による室内空気汚染等により生じる体調不良」をいいます。
症状が多様で、症状発生の仕組みをはじめ、未解明な部分が多く、また様々な複合要因が考えられます。
症状
- 学童や幼児の場合には、めまいや吐き気、頭痛を起こしたり鼻血を出すなどの反応を起こし、学校に通えなくなることもあります。不登校や家庭内暴力とも関連性があるともいわれています。
- 大人の場合には、身体症状として頭痛、けん怠感(だるい)、下痢、便秘、咽頭(いんとう)痛、筋肉痛、不安などが、精神神経症状として集中できない、記憶力が落ちた、疲れやすい、うつ、性的不能、眠れないなどがあげられます。
ほかの疾患とも症状が似ており、検査でも異常値を示すことが少ないことからシックハウス症候群は医療現場において診断がつかないことも多いです。また風邪やインフルエンザ、自律神経失調症、更年期障害などと誤診され、症状の改善が見られないまま時間が経過することもあります。
シックハウス症候群に関しては、医学的な研究があまり進んでいるとはいえません。しかしながら、新しい住居に転居後体調が崩れたり、住居から離れることで症状が改善するようなときには、本疾患を疑う必要があります。こうした場合には、転居したこと、住居から離れることで症状が改善することを主治医に告げてください。原因となる物質は、揮発性有機化合物(VOC)やホルムアルデヒドなどの化学物質に限らず、ダニ、真菌、タバコの煙など建築資材以外の物質も関与しているといわれます。
シックハウス症候群の原因としては、化学薬品等の中毒や化学物質によるアレルギー反応が考えられています。化学物質に対する過敏症の診断には原因と思われる物質の微量負荷試験が必要となりますが、日本ではこうした検査のできる施設は数カ所に限られます。
シックハウス症候群の原因物質と症状の発生原因
物質 | 症状の発生原因 | 症状 |
---|---|---|
生物由来物質 | 細菌・真菌 | 感染を起こす |
エンドトキシン・マイコトキシン | 刺激物質 | |
ダニ、真菌、昆虫、ペットやその排泄物、植物構成成分(花粉など) | アレルギー反応を起こす | |
化学汚染物質 |
硫黄酸化物、窒素酸化物、オゾン、ホルムアルデヒド、揮発性有機化合物(VOC) |
刺激物質。一部、アレルギー反応を来たす。 |
浮遊粒子状物質 | 多環芳香族炭化水素、各種粉じん | 刺激物質 |
タバコの煙 | ニコチン、ベンツピレンその他多環芳香族炭化水素 | 刺激物質 |
さまざまな要因
- 個人差が大きいこと
- 症状の発生と化学物質の濃度との関係は個人差が大きく、同一環境でも、強い症状を訴える人がいる一方、全く平気な人もいます。
- 化学物質の放散量が一定しないこと
- 建材からの化学物質の放散は、同じ建材でも放散速度は生産されてからの期間、保管条件(温度や湿度)の影響を受けます。
- 多様な原因が存在すること
- 室内空間の汚染物質の発生源は家具、調度品や燃焼器具から発生するガス、喫煙の煙など、室内で使われている建材以外の各種の物品や器材等が原因となっている可能性があります。
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化学物質の発生源の例
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住み方・生活習慣による影響
- 室内化学物質などによる汚染の状況は、換気や掃除の方法や程度、冷暖房の使用方法、喫煙の有無など、日ごろの生活習慣によって左右されます。住まい方や生活習慣を見直すことで、問題の改善をはかることが可能です。
日常生活で注意できること
- 効果的な換気を心がけましょう
- 外界条件(気温、外気の質)にもよりますが、日常生活において窓の開放による自然換気を積極的に取り入れて下さい。
- 給気口がある場合は、できるだけ開放状態にして下さい。
- 室内ドアを開放して通気経路を確保するように心がけて下さい。
- 窓を閉め切っている場合は、例えば浴室、トイレ、台所などの換気扇をときどき運転して換気量を確保するようにして下さい。
- 数日間にわたって不在した場合などは、特に換気に留意することが大切です。
風通しが良いため
換気が効率的に行われる。風の逃げ道がないため
換気されにくい。
- 身の回りの化学物質に注意しましょう
- 生活の中では建材以外にも、室内空気汚染源となる可能性があるものがたくさんあります。それらはできるだけ持ち込まないようにし、使用する場合も換気に充分に注意して下さい。
室内空気を汚染する化学物質の指針値について
厚生労働省では、現在までに、ホルムアルデヒドなど13物質について指針値を示しています。
この指針値は、人がその化学物質の示された濃度以下の暴露を一生涯受けたとしても健康への有害な影響を受けないであろうとの判断により設定された値です。これらは、随時必要があれば変更されることがあります。
両単位の換算は25℃の場合
ppm:100万分の1の濃度 ppb:10億分の1の濃度
名称 | 主な用途 | 室内濃度指針値* |
---|---|---|
ホルムアルデヒド |
接着剤、防腐剤 |
0.08ppm(100μg/m3) |
トルエン |
内装材等の施工用接着剤、塗料の溶剤 |
0.07ppm(260μg/m3) |
キシレン |
内装材等の施工用接着剤、塗料の溶剤 |
0.05ppm(200μg/m3) |
パラジクロロベンゼン |
芳香剤、防虫剤 |
0.04ppm(240μg/m3) |
エチルベンゼン |
内装材等の施工用接着剤、塗料の溶剤 |
0.88ppm(3,800μg/m3) |
スチレン |
ポリスチレン樹脂等高分子化合物の原料 |
0.05ppm(220μg/m3) |
クロルピリホス |
シロアリ駆除剤 |
0.07ppb(1μg/m3)
但し小児の場合は |
フタル酸ジ-n-ブチル |
塗料、接着剤 |
1.5ppb(17μg/m3) |
テトラデカン |
塗料の溶剤 |
0.04ppm(330μg/m3) |
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル |
可塑剤 |
6.3ppb(100μg/m3) |
ダイアジノン |
殺虫剤 |
0.02ppb(0.29μg/m3) |
アセトアルデヒド |
接着剤、防腐剤 |
0.03ppm(48μg/m3) |
フェノブカルブ |
シロアリ駆除剤 |
3.8ppb(33μg/m3) |