おたる文学散歩 第4話

公開日 2020年10月21日

更新日 2021年01月14日

第4話 啄木と 、小樽の初雪(広報おたる平成18年10月号掲載)

 石川啄木は、明治40年8月に起きた函館大火のため生活の基盤を失い、札幌の新聞社に移ります。しかし、ここも2週間ほどで退社し、9月にできたばかりの小樽日報社に行くことになります。小樽に到着するのは9月27日のことです。小樽日報社の社屋は現在の静屋通り、本間内科付近にありました。

かの年のかの新聞の/初雪の記事を書きしは/我なりしかな

啄木のスクラップ帳、『小樽のかたみ』の中に「昨朝の初雪」という記事があります。

「......道路(みち)にはまだ流石(さすが)に積る程でもなけれど、四方(よも)の山々は紅葉と雪のだんだら染、内地では見られぬ景色と見惚(みと)れしが、......」(小樽日報 明治40年10月27日・第6号)

この初雪はよほど印象深かったようで、函館の親友、宮崎郁雨(みやざき いくう)にあてたハガキにも、「今朝初雪、紅葉と雪のダンダラ染は美しい」と書いています。

ところで、前回の記事中の啄木の啄に点が無いのは誤りではないか、と読者からご指摘をいただきました。確かに、啄の字は点があるのが「正字」(康煕字典体)とされています。ただ平成2年、常用漢字に準じる人名用漢字として、点のない啄が追加されたこと、また日本で使われているワープロ、パソコンのほとんどが点のない啄しか備えていないことから、一般的な印刷物では、点のない啄木という表記が普通になったようです。

啄木自身は、手紙や原稿で署名に点を省略していることも多く、無頓着だったとも思えます。しかし啄木の小説を連載することになった新聞の編集者あてに、「啄(点あり)木の啄(点あり)は啄に非ず啄(点あり)に御座候」と校正を求めているので、正字へのこだわりはあったのでしょう。

そこで市立小樽文学館では、館内の表示や印刷物では今後も「石川啄(点あり)木」と表記することとします。さきほど挙げた理由から、現在、一般的な印刷物でもすべて点のある「啄木」に統一することは難しいと思われますが、啄木にゆかりの深い当地では、できるだけ本人のこだわりを大切にしたいと思います。

※点のある「啄」を使用できないため、「啄(点あり)」と表記しています。ご了承ください。

 本間内科医院前の案内板

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