公開日 2020年10月22日
更新日 2021年01月14日
第9話 住吉神社の二つの句碑(広報おたる平成19年3月号掲載)
住吉神社は、創建明治元年、明治14年に現在地に社殿を造営した歴史ある神社ですが、この境内には二つの句碑が建っています。
一つは、平成5年に建てられた川柳作家田中五呂八(たなかごろはち)の句碑で、「人間を掴(つか)めば風が手にのこり」と刻まれています。
田中五呂八は、明治28年釧路に生まれ、現在の北海道大学を中退後、公債会社に勤務。小樽へ移ったころに川柳を始めたという異色の作家で、伝統川柳に飽きたらず「新興川柳」を唱え、人間の生と死を深く見つめた作品を多く作っています。
神経を陽(ひ)にさらされた木の嘆き
月に寝る橋の長さを振りかへり
神が書き閉づる最後の一頁(ぺいじ)
闇を切る星の深さを闇が吸ひ
8年ほど前、この田中五呂八の碑のそばに、古びた石碑が置かれました。文字も読みにくいのですが、これは俳聖、松尾芭蕉の句碑で、「梅が香にのつと日の出る山路哉(やまじかな)」と刻まれています。
比良暮雪(ひらぼせつ)『小樽俳壇史』(昭和32年)によると、「この碑は明治二十二年堀松秋樽を中心とした俳団梅香社連衆が発起して始め秋樽の祠官する量徳町黒住教会の側に建てられたが、後秋樽が住吉神社の神官に転じた関係から同所へ移された」とあります。
つまり早くから住吉神社境内にあったものですが、戦時中に「時局にそぐわない」と撤去されそうになったのを、隣家が惜しんで庭に移したそうです。
これがまた神社境内に戻され、小樽の句碑歌碑の中で最も古い碑が今に残されました。
碑を保存された方は、庭に置いていたころ、そばに梅の木を植え、昔をしのんでいたそうです。小さな「風雅」が、こうして守り抜かれてきたのです。
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