広報おたる掲載「地域医療を考える」karte1

公開日 2020年10月28日

更新日 2021年01月14日

地域医療を考える karte1 小樽の地域医療を守っていくために (平成21年6月号掲載)

 

医療を取り巻く環境は大きく変化し、特に地方では医療環境の維持が難しくなっています。そのような中で市民の皆さんの健康を守っていくためには、行政や医療機関だけでなく、皆さんの理解や協力が不可欠です。

そこで今月から数回にわたり、小樽における地域医療の現状や課題、これらに対する市の取り組みなどを皆さんにお知らせしていきます。(写真はイメージです)

karte1 イメージ

 

聞こえるさまざまな声

 皆さんは小樽の地域医療についてどのくらい現状をご存じですか。

 

「市内には大きな病院がいくつもあるので、医療環境は十分だ」

 

「たくさんの税金を使っている市立病院はいらないのでは」

 

「病気になったら札幌の病院に行けばいいので、このままで良い」

 

 このほかにも小樽の地域医療について、さまざまな意見が聞こえてきます。しかし市民の皆さんの健康を守っていくために、今の小樽の医療環境は十分なのでしょうか。また本当に市立病院は必要ないと言えるのでしょうか。

 

小樽の医療環境

医療施設数と医師数

まずは市内の病院数や医師数などを整理してみましょう。右の表をご覧ください。人口10万人当たりの病院数や病床数、診療所数、医師数すべてにおいて全道平均を上回っています。数字の上だけでは、本市の医療環境は充実しているように見えます。
しかし実際に、皆さんの多くが病気やけがで入院治療を受けるであろう市立病院や公的病院等(※1)では、医師不足が深刻化しています。医師の確保が困難な診療科は休止となっている場合もあり、病気によっては市内で1カ所しか受診できないものや、市内では治療を受けられないものもある状況です(医師不足の原因については下 記を参照)。
例えば市立小樽病院では、医師不足により産科が休診。そのため小児科と産科の医師が必要な周産期医療(※2)は小樽協会病院のみ受診可能となっています。また呼吸器科についても、市内における専門医の絶対数が少ない中で何とか維持している状況。そのため市立小樽病院にある後志管内唯一の結核病床は休床となっており、結核の患者さんは市外で治療を受けざるを得なくなってしまいました。

 次に下にある主要死因別割合のグラフをご覧ください。本市も全国と同様に「がん」「心疾患」「脳血管疾患」による死亡率が上位を占めています。これらの病気には高度で専門的な医療環境が必要ですが、市内では何とか医師を確保して対応している状況です。また高齢者に多い糖尿病や腎疾患などの慢性疾患についても専門医が不足しています。

 さらに救急医療では、夜間における一次救急の大部分を夜間急病センターで対応していますが、ここでも医師の確保が難しい状況。また二次救急では外科を除いて受け入れ体制が十分ではないため、早急に整備が必要です。

平成19年度主要死因別割合

 

守るべき地域医療

 このように多くの課題を抱える小樽の医療環境。このままでは地域医療が崩壊しかねません。今後ますます高齢化が進む中、市民が将来にわたり安心して医療を受けられる医療体制の整備が必要です。

 そのため市では、課題解決に向けて公的病院等の院長や小樽市医師会の代表を交えた「再編・ネットワーク化協議会」を設置。ここでは小樽の医療環境などを再確認しながら、それらの活用と地域医療の維持などについて話し合われています。またその中で確認されていることは、市立病院がこれまで小樽・北後志地区の医療において重要な役割を担ってきた事実。今後はそれを踏まえ、地域医療を守るためには市立病院と他の医療機関の役割分担と連携強化が必要だということです。

 しかし市立病院が今後もその役割を果たし、機能を維持していくためには、二つに分かれていることの非効率性や施設の老朽化、経営の改善など多くの課題を解決していかなければなりません。

 

健全化を急ぐ市立病院

 市は現在、「小樽市立病院改革プラン」を策定し、これに基づき病院の改革を行っています。その一つとして経営形態の変更を行い、4月から地方公営企業法の全部適用を実施。新たに病院事業管理者を設置し、市長から人事や予算編成などの権限を移しました。管理者には、長年にわたり札幌医科大学で麻酔学講座の教授を務め、大学病院の院長経験もある並木昭義(なみき あきよし)氏を迎え、両市立病院の最高責任者として経営改善に取り組んでいます。また市立小樽病院では専任の医師を配置して検診の強化を行い、市立小樽第二病院ではその専門性を広く知ってもらうために名称を変更しました 。

 

 今回は本市における地域医療の現状や課題などについてお知らせしました。今後は地域医療に欠かすことのできない救急医療、再編・ネットワーク化協議会での議論、医療機関による地域連携などについてお知らせします。また本市の考え方などもさらに詳しくお知らせし、皆さんと一緒に小樽の地域医療について考えていく機会とします。

 

 

なぜ医師不足と言われる?
 医師の研修制度が平成16年4月に変更され、研修医が臨床研修を行う医療機関を自由に選べるようになりました。それにより大学に残る若手医師が減少し、大学が従来行ってきた地域医療機関への医師派遣が困難になっていることが一番の要因といわれています。また都市部に医師が集中することや診療科によって医師数が偏っていること。また病院に勤めている医師が、過重労働などにより辞めてしまうことなども要因といわれています。

 

※1「公的病院等」

 医療法上の公的医療機関である済生会小樽病院と社会事業協会小樽病院(小樽協会病院)に小樽掖済会病院を加えた三つの病院

 

※2「周産期医療」

 周産期とは妊娠後期から新生児早期までのお産にまつわる時期を一括した概念のことで、 この時期に母体、胎児、新生児を総合的に管理して母と子の健康を守る医療。

 

問い合わせ先

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〒047-8790 小樽市富岡1丁目5番12号

電話 0134-22-3117

ファクス 0134-22-1469

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住所:〒047-8660 小樽市花園2丁目12番1号
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