新しい学校づくりの取り組み 高島小学校

公開日 2020年11月09日

更新日 2021年02月25日

 平成25年4月に祝津小学校と統合した高島小学校の新しい学校づくりの取り組みについてご紹介します。

 

吉田志津雄校長(※)にお話を伺いました。

※平成25年度当時

広がる校区 〜新しい学校づくり 地域の思いを受け止めて〜

 

 

 平成25年4月に高島小学校と祝津小学校とが統合し新しい高島小学校がスタートしました。祝津小学校は明治9年の創立と小樽市内では2番目に古い学校でしたが平成25年3月末をもって137年の長い歴史に幕を閉じました。祝津小学校からの児童たちは、統合前に事前交流を繰り返し行ったこともあり、高島小学校の新しい友達ともすぐに慣れて元気に学校生活を送っています。
 

 「学校は、地域の文化的中心であり、精神的結合の基礎である。」

こう言われますが、若いころ教頭として赴任した蘭越町の小学校で閉校を経験し、身をもってそう感じました。学校がなくなる地域住民の寂しさ。一方で、子供たちには小規模校では経験することのできない集団生活を通じて社会性を習得してほしいという親たちの思い。地域住民と保護者、それぞれの思いや葛藤がひしひしと伝わりました。

 

 蘭越町での閉校の体験から、新しく本校の校区となった祝津地区の歴史と伝統を守り、地域の特長を生かした学習を進めていくことは、本校の使命の一つだと感じました。学校統合を前向きにとらえ、豊富な地域資源を生かしてふるさと学習を深めていくこと。この考えが新しい学校づくりを進めていく上での出発点となりました。

 

学校教育目標 

   ゆたかに学び ひとみかがやく たかしまの子(平成25年4月1日制定)

 保護者や地域の皆さんに実施した「新しい学校づくりのためのアンケート」の結果をもとに新しい学校教育目標を制定しました。

 

「ゆたかに学び」・・・自らが進んで学習に取り組み、体験を広げ、身に付いた力を発揮する子供、夢や目標に向って最後まであきらめず努力する子供を育てていきます。


「ひとみかがやく」・・・学校生活が楽しく、充実していれば子供は生き生きし瞳が輝いてきます。かけがえのない一人として大切にされ、安心して自分の良さを発揮し、友だちとともに高まっていく子供を育てていきます。

 

「たかしまの子」・・・高島(たかしま)小学校の校区は、地域資源の宝庫。まさに「たか(ら)(゛)ま」です。

 

豊富な地域資源 〜ふるさと学習 小樽の原点がそこにある〜

新しい校区となった祝津地区には、おたる水族館、鰊御殿、漁港、水産加工場、ガラス工房といった豊富な地域資源があります。海に面した小樽ですが、これだけ海を身近に感じることのできる地域はほかになく、教育現場からみても非常に魅力的なロケーションです。
 祝津を歩けば見つかる「ニシン漁」、「群来」、「漁港」といったキーワード。
 ある意味では小樽の原点がここにあるといえます。子供たちにはこの地域を誇りに思い、地域のことを積極的に学び肌で感じてもらいたい。そんな思いから「ふるさと学習」が新しい学校づくりの柱になると考えました。

 

 

今年度、中学年の総合的な学習の時間では、歴史的建造物である鰊御殿の歴史を勉強したり、おたる水族館では海に生息する生き物を学習しました。また、地元の小学校ということで特別にバックヤードを見学し、獣医さんの話を聞いたり飼育員としての仕事を体験したりしました。高学年は、水産業について調べ、地域の漁業の特色や水産工場で働く人の工夫や努力を学習しました。また、ガラス工房を訪ねガラス製作も体験しました。

 

 こうした「ふるさと学習」に関わる取り組みは、同時にキャリア教育としての側面も持ち合わせた有意義なものとなっています。

 

ユネスコスクール認定 〜世界に目を向けて〜

 

 「新しい学校づくり」を進める上でのもう一つの柱がユネスコスクールの認定です。

 これからの時代は、海外に出ていく機会がこれまでとは比較にならないくらい増えていくでしょう。私たちは、そういう時代を生き抜いていける子供たちを育てていかなければなりません。

 

 平成25年4月、本校は後志管内では2校目となるユネスコスクールに認定されました。ユネスコスクール認定を契機に人権教育や国際理解にも取り組んでいきたいと思っています。また、インターネットを通じて日本全国にあるユネスコスクール認定校との交流を進め、さらには、国際感覚を養うために世界180の国・地域に9,000校ある海外の認定校との交流も視野に入れた取り組みを考えています。

 

 「自分たちの地域はこんなところだよ」

 相手に本校のことを紹介するためには、まず自分たちの地域のことを知らなければなりません。そして、他の学校や地域と自分たちの地域とを比べてみることで見えてくるものがあります。自分たちよりも優れたところを認め理解する。自分たちも取り入れてみよう、こうなれるのではないかという気付きがあるでしょう。一方で、自分たちはなんて恵まれているのかと思うこともあるかも知れません。

 

 自分たちの地域を知る「ふるさと学習」によって、自分たちの故郷の良さを再認識することができ、新しい一面が見えてくるものと考えています。

 

 

 

外国語活動の取り組み 〜観光都市小樽 ホスピタリティの心〜

 

 平成25年7月に北海道教育委員会及び小樽ユネスコ協会の支援のもと、「OTARU ENGLISH DAY」(小樽イングリッシュ・デイ)を開催しました。外国人の先生や市内の小中学校の児童・生徒らと一緒に、2日間できる限り英語のみを使って過ごすものです。1日目は本校でALT(外国語指導助手)を交えて自己紹介や英語を使ったゲームなどで交流をしました。

 2日目には小樽運河周辺に出向き、外国人観光客の方々に英語で小樽を紹介をしたり、思い思いの質問をしたりするなど、とても有意義な取り組みになりました。

 

グループで輪になって
交流の様子
カードを使って

 

 平成20年に観光都市宣言をした小樽市には、毎年多くの観光客が訪れています。観光客に対する市民一人一人のホスピタリティの醸成が叫ばれて久しいですが、観光客に対するおもてなしの心を養うことは、地域に根ざしたふるさと教育・人材教育にもつながっていくものと思っています。

 こうした外国語活動の取り組みを継続し、ゆくゆくは本校を外国語活動の拠点校にできればいいと思い描いています。

 

楽しいゲームを通して英語にふれる児童たち
運河の前で外国人観光客に質問
ドキドキしながらのチャレンジ

 

ICTを活用した教育 〜実物投影機の導入〜

 

 

 新しい学校づくりの一環として、今年度、実物投影機を導入しました。実物投影機を使っての授業力向上研修講座を開催し、他校の先生たちとも一緒にその有効性について理解を深めました。

 

「卵はある角度からみると円形だ」 

 実物投影機を使った視覚に訴える授業によって、児童たちの理解が進みました。算数科での定規や分度器の使い方、面積・体積などの学習で効果的な活用ができています。言葉だけでの指示で活動することや読み取りが苦手な子にとっても有効なものです。 卵がある角度からみると円形であることは、言葉で説明するよりも実物投影機の映像によって瞬間的に理解することができます。

 ノートの使い方について説明する際には、模範となる児童のノートを拡大し、見せて説明することで、自分のノートも使われたいという自己存在感が膨らみ、意欲を高めることにつながっていきます。

 

 実物投影機は子供たちも様々な発表の場面で使っています。問題の解き方を実物投影機を使って発表することで、発表する力、プレゼンテーションの能力が向上しています。機器の操作に慣れるにしたがって、授業での活用の幅に広がりが見られてきました。今後とも様々な活用方法について校内で情報共有しながら検証していきたいと思っています。

 新しい学校づくりの一環として、今年度、実物投影機を導入しました。実物投影機を使っての授業力向上研修講座を開催し、他校の先生たちとも一緒にその有効性について理解を深めました。

 

実物投影機による発表
研究授業の様子
先生も真剣です

 


 

地域に根ざした学校づくり 〜地域とのつながり〜

 

 これからの学校経営には地域との連携が必要不可欠です。地域あってこその学校、そして学校あっての地域。地域全体で子供を支えることは、地域づくりにもつながります。高齢化が進む地域住民にとっては、自らの技能や経験を学校や地域に還元することが社会貢献になり、ひいては生きがいの創出につながるのではないでしょうか。それは、地域の活性化を促すことにもつながるでしょう。

 

 学校にとっても学校行事の支援、放課後学習や居場所づくり、通学路の見守り、地域の伝統文化の継承など、地域の協力は大変ありがたいものです。学校に協力したいという地域住民の思いは、必ずしも学校が求めるものと一致するとは限らないのですが、それでも、先生たちには積極的に学校の外に出て、地域の思いを受け止めてもらいたいと思っています。地域とつながることは先生たちにとってもメリットのあることですし、教育力の向上にも結び付いていきます。もちろん子供たちにとっても大きなメリットがあります。通常の学校内の活動だけでは触れることのできない人間関係を構築することで、様々な経験を通じ多面的な成長が期待できます。

 

地域のお祭りに参加
伝統ある御神輿
校区内にある老人ホームでの交流活動

 

「子供は地域で育つ、地域は子供で結ばれる」

 

 子供の成長には地域の教育力が必要です。地域に根ざした学校づくりを通して、学校と地域と双方にメリットのある関係を築いていければ理想的です。

 本校のある高島地区では、地域の皆さんによって毎年「高島文化祭」が開催されています。昨年、その文化祭に組木の展示がありました。細やかな工夫を凝らした作品で、身近な地域にこんな高い技術をもった方がいっらしゃることを初めて知りました。学校にお招きして子供たちの前で実演していただくことを計画しており、来年の文化祭には本校の子供たちの作品も出品できればと考えています。こうして地域とつながっていくことが大切なのだと思います。

 

人権教育
放課後学習
地域ボランティアによる水泳授

 

小樽商科大学の学生ボランティア 〜樽っ子学校サポート事業〜

 

 地域とのつながりでいえば、小樽商科大学の学生たちによる地域ボランティアとしての活動は特筆すべき取り組みです。放課後週4回、子供たちに勉強を教えてくれていますが、学生たちはみんな手弁当で参加してくれており、さらに活動を自分たちの口コミで広げて仲間を募ってくれています。本当にありがたいことです。

 

 この放課後学習は、当初参加する児童たちが少なかったのですが、学生たちの熱意あふれる指導が功を奏し、2学期末には全児童の約半数が参加するまでになりました。

 普段接している先生たちとは違った若い大学生たちに触れることで、子供たちは良い刺激を受け、大きなパワーをもらっていると感じています。

 こうした地域ボランティアの取り組みは、今後、水泳授業、スキー授業へと広げ、一層充実した展開ができればと考えています。

小樽商大の学生による放課後学習
学生たちが熱心に指導してくれています
小樽商大の学生による授業

 

参考リンク

 

   

    小樽市立高島小学校ホームページ  

 

お問い合わせ

教育委員会教育部 市立学校適正配置
住所:〒047-0034 小樽市緑3丁目4番1号
TEL:0134-32-4111内線7533
FAX:0134-33-6608
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