公開日 2020年11月14日
更新日 2021年06月12日
蜃気楼とは、遠くから届く光が直線的に進まず、途中で屈折するために景色が通常とは異なって見える現象です。光の屈折は温度の異なる空気の境界で起こります。その温度構造の違いにより、「上位蜃気楼」と「下位蜃気楼」の二つのタイプがあります。
小樽沖の石狩湾に発生する蜃気楼「高島おばけ」は、上位蜃気楼です。
上位蜃気楼
空気の上層の方が暖かく下層が冷たい場合は、その境界を通る光が凸状に進むため、遠くの景色の上方に虚像が見える「上位蜃気楼」になります。
上位蜃気楼は日本国内において十数か所でしか報告されておらず、それらの中でも継続的に観測されているのは、石狩湾の他に、富山湾、琵琶湖、猪苗代湖、苫小牧沖、オホーツク海のみです。限られた地域でしか観測されていないことから、上位蜃気楼はとても珍しい現象だと言えます。
上位蜃気楼は、虚像が実像の上に見え、虚像が複数見えます。さらに、虚像に伸びがあり板塀状の縦縞模様が見られたり、虚像の上端が水平的に平坦になって見えたりします。ただし、上位蜃気楼の規模が小さい場合には、景色が通常に比べ、ただ縮んで見えたり、海面に埋もれて見えたりするだけの場合もあります。
上位蜃気楼が発生しているときの空気の温度構造と光の経路
下位蜃気楼
空気の下層が暖かく上層の方が冷たい場合は、その境界を通る光が凹状に進むため、遠くの景色の下方に虚像が見える「下位蜃気楼」になります。
下位蜃気楼は、日本国内のどこでも見ることができ、季節を問わず年中見ることができるので、特に珍しい現象ではありません。海水面温度よりも気温の方が低くなる秋冬や、日射により海面が温められる晴れた日などに発生します。
下位蜃気楼の特徴は、虚像が実像の下に反転して見えます。実像と虚像の境を中心に鏡に映ったように見え、全体として伸びているように見えることもあります。
遠くの景色が浮いた島の様に見える「浮島現象」は下位蜃気楼で、背景の空などが下方に反転して見えるので宙に浮いているように見えます。アスファルトに水たまりがあるように見える「逃げ水現象」も下位蜃気楼です。
下位蜃気楼が発生しているときの空気の温度構造と光の経路