重要文化財旧日本郵船株式会社小樽支店の保存修理工事について

公開日 2020年10月15日

更新日 2022年06月28日

※お知らせ(保存修理工事に係る長期休館について)

 重要文化財旧日本郵船株式会社小樽支店は昭和44年3月に国の重要文化財指定を受け、昭和59年から62年に保存修理工事が行われましたが、この工事から30年以上が経過し、外観・内観ともに老朽化しているため、令和2年7月より大規模な保存修理工事を行っています。

 保存修理工事は建物に仮設の素屋根(覆屋)をかけ、本館の耐震補強、外壁の修理、内部漆喰壁の補修、屋根葺替え、小屋組の修理、建具の塗装・調整、壁紙の修理などを行うほか、北側の石塀についても耐震補強、石材補修を予定しています。工事中は建物全体に仮設の覆屋をかけるため、内観、外観ともに非公開となりますが、保存修理工事の進捗状況は今後ホームページにおいて随時報告します。なお、工事完了後の予定については改めてお知らせします。

【保存修理工事期間】

令和2年7月から令和6年6月まで(予定)

※工事の進捗等により期間が変更となる場合があります。

保存修理工事 進捗状況

令和2年度 保存修理工事概要

1 令和2年7月7日 阿部・福島・西條共同企業体と保存修理工事契約、公益財団法人文化財建造物保存技術協会と工事監理契約を締結しました。

2 外部足場・素屋根(覆屋)とガードレールの設置
工事着工にあたり、工事の安全性、雨天時や冬期間の作業性を確保するため、本館及び石塀周囲に外部足場・素屋根を設置しました。また、正面側の外部足場・素屋根設置に関わり、通行人の安全確保等のためのガードレール設置と道路占有のための白線引き換えを行い、工事環境の整備充実と通行人の安全確保に努めています。

 

3 内部の養生

内部の養生は、基本的にパンチカーペットを敷き、工事中の通行頻度が多い階段の踊場・踏面などには下地に合板を敷設しました。

4 外部足場・素屋根の設置に関わる敷石撤去

 外部足場・素屋根を設置することと、石塀の補強工事にあたり建物北側通路の敷石を一旦解体しています。解体の際には敷石1枚1枚に番号をつけ、据付の際に同じ位置に戻すことができるように施工しています。

5 屋根の解体工事

 本工事では耐震補強工事や屋根葺替え工事に先立って、屋根の解体工事を行っています。

 

 

 

令和3年度 保存修理工事概要

6 石積みの耐震補強

 石積みの変形を防ぐため、壁頂部から垂直に引張材(アラミドケーブル)を挿入し、耐力を向上させました。施工の概要は以下のとおりです。

1.アラミドケーブル挿入孔の穴あけ→2.アラミドケーブルの挿入→3.挿入孔の下部(基礎)に対してモルタルを充填してアラミドケーブルを固定→4.石積みの頂部に設置した定着金物でアラミドケーブルを固定して補強完了。

             [写真①] アラミドケーブル孔の穴あけ     [写真②]アラミドケーブル挿入

           [写真③] モルタルの充填           [写真④] 定着金物でアラミドケーブルを固定

7 外壁石材の擬石補修

 外壁石材のもろくなっている箇所に対して石材の仕上げ面の削り出しを行い、基本的にもろくなっている部分の厚さが50mm以内の場合は、補強ピン・エポキシ樹脂(接着剤)・ステンレス線などで下地を作り、エポキシ樹脂と色調整した骨材(石材等を配合)を混合した擬石材を塗り付けて表面を調整しました。施工の概要は以下のとおりです。
1.ノミなどでもろくなっている部分を取り除く→2.アンカー孔をあけた後にエポキシ樹脂を充填→3.欠損の深さに応じてビスやボルトを設置→4.欠損の広さに応じてステンレス線やネットの張付け→5.擬石材を塗付け→6.既存石材の面に合わせるように擬石材の表面を調整して擬石補修完了。
           [写真①] もろくなった部分の除去    [写真②] ステンレス線やネットの張付け  
[写真③] 擬石材の製作          [写真④] 擬石材の塗り付け
8 外壁石材の張石補修
 外壁石材のもろくなっている部分の厚さが50mm以上の場合は、モルタルで下地補強し、軟石を板状に加工した張石材をアンカーボルトと接着剤で固定しました。施工の概要は以下のとおりです。
1.もろくなっている部分を取り除く→2.張石材を張り付ける箇所の寸法に合わせて軟石を加工→3.アンカー孔をあけた後に補強アンカーを施工してエポキシ樹脂(接着剤)で固定→4.削り取った面にモルタルを塗り下地補強→5.張石材をアンカーボルト等で固定→6.最後に擬石材でアンカー孔を覆い張石補修完了。
 
[写真①]グラインダーでの削り出し     [写真②]張石材へのエポキシ樹脂塗り付け              
                [写真③] 外壁石材への張石材の固定状況  [写真④] アンカー孔の覆い作業
9 屋根骨組みの耐震補強
 本工事では石積みの耐震補強のほか、屋根の骨組み付近に水平ブレースの補強材(鉄骨)を設置して、水平方向の骨組みを設ける耐震補強を行いました。施工の概要は以下のとおりです。
1.小屋裏に設置された通路や小物は水平ブレース関連の金物に干渉するため一旦すべてを撤去→2.骨組みの端部等の腐朽箇所を新材で補修した上で屋根の骨組みに水平ブレース金物を設置→3.水平ブレースと受け金物を接続させて耐震補強完了。

                  [写真①] 屋根の骨組みに設置した鉄骨  [写真②] 鉄骨と受け金物の接続状況

                                          [写真③] 補強完了後の状況

10 煙突の耐震補強

 煙突の耐震補強は屋根の骨組みと煙突をしっかりと繋ぎ合わせ、石積みの補強と同様に煙突頂部からアラミドケーブル孔をあけた後、垂直に引張材(アラミドケーブル)を挿入して補強しました。             [写真①] 屋根の骨組みと煙突の固定    [写真②] 煙突頂部からのアラミド孔の穴あけ

                                    [写真③] アラミドケーブルの挿入

11 本屋根・腰屋根の解体及び復旧

 屋根材の鉄板葺きは全体的にサビ等の劣化が進行しており、小屋裏からは随所に雨漏り跡が確認されています。また、屋根端部の内樋(うちどい)や軒先の飾りも著しく傷んでおり、各所に穴が開いた状態で雨漏りが顕著な状況です。そのため、屋根は全体を解体し、新たな屋根材は耐久性等を考慮した新材の鋼板で復旧しています。※屋根工事は令和4年度も継続して実施しています。

                  [写真①] 修理前の屋根状況       [写真②] 鉄板葺きの解体状況

                                        [写真③] 新材鋼板の復旧状況

令和2・3年度の保存修理工事の紹介動画について

 令和2・3年度の保存修理工事の内容(概要)を動画でご覧いただけます。

 

重要文化財旧日本郵船株式会社小樽支店の概要

 旧日本郵船外観 旧日本郵船内観 旧日本郵船外観

 重要文化財旧日本郵船株式会社小樽支店は明治37年着工、同39年10月に落成した近世ヨーロッパ復興様式の石造2階建建築です。設計者は佐立七次郎、施工は地元の大工棟梁山口岩吉があたり、工費は当時の金額で約6万円でした。当時小樽は北海道開拓の拠点都市として商業港湾機能を充実しつつあり、船舶・海運・倉庫業界が競って、船入澗を設置し石造倉庫を建てました。また明治後半から一流建築家達が当時の最先端の技術で、代表的作品を残しました。この建物はその草創期の象徴的存在です。
 昭和30年、市が日本郵船から譲り受け、翌31年から小樽市博物館として再利用されて来ましたが、昭和44年3月には、明治後期の代表的石造建築として国の重要文化財に指定されました。
 しかし、年ごとに老朽化が目立って来たため、昭和59年10月修復工事を着工、33カ月の工期を経て62年6月に竣工しました。ここに商都小樽を代表する明治後期の商業建築が優れた文化遺産としてよみがえりました。

 建物は表玄関を中心に左右対称、北面に貴賓用横玄関を配し、背面両翼に張り出すコの字型平面をとっています。外壁には小樽天狗山・奥沢産軟石、腰・胴蛇腹・軒部分は登別産中硬石を使用、内部は事務所としての機能性と、大理石敷き横玄関、繊細な木彫の大階段手すり、美しく精緻な中心飾り等格調高い装飾が調和し、商業建築として、設計者の周到な計画と配慮が見られます。また、米国製のスチールシャッター、建具金物類を用い、暖房は地下にボイラー室を設け蒸気暖房とし、窓はすべて二重ガラスで北国の冬を考慮した当時としては最新式の設備を備えていました。

 2階貴賓室は寄木造りの床、空色漆喰の天井、菊紋内摺セードシャンデリア、菊模様の金唐革紙(※)の壁、絨鍛、鏡付大理石暖炉等で彩られ、家具調度類の配置、また色彩的にも往時の雰囲気がよく伝わってくる贅を尽した華麗な空間です。隣りの会議室は約182平方メートルと広く、天井の大胆な弧を描く蛇腹の彫刻と精緻な中心飾り、シャンデリアの光を反射するアカンサス模様の金唐革紙、床を覆う絨鍛、大テーブルと36個の椅子が悠然として迫力ある空間を感じさせます。

※金唐革紙(きんからかわかみ)

江戸時代にオランダ貿易で欧州から輸入した革製品をヒントに和紙で製造した革に似せた紙。はじめはタバコ入れとか小物を作っていましたが、明治初期から大蔵省印刷局で壁紙を作り、欧米へ輸出するようになりました。

貴賓室

 1階は客溜りと営業室が高いカウンターで仕切られており、力強い格天井と色鮮やかな天井紙等が海運業の隆盛を象徴しています。細部仕様まで復元された照明器具の高さ、机・椅子類の配置が執務状況を実感させ、豪壮な造りの金庫室や支店長室、応接室などとも機能的に調和がとれています。渡り廊下でつなぐ瓦葺附属舎には球戯室、倶楽部、看貫場(計量室)などが配置され、当時の特徴的な仕様と景観が見られます。

設計者佐立七次郎(1856~1922)

 安政3年讃岐藩士の家に生まれる。工部大学校造家学科(現東大工学部)の第一期生。同期は辰野金吾(日本銀行旧小樽支店・東京駅設計)、片山東熊(迎賓館設計)、曽禰達蔵(旧三井銀行小樽支店設計)の3人がいる。卒業後、工部省、海軍省、逓信省を経て、明治30年頃より日本郵船の建築顧問となる。現存する作品としては日本水準原点標庫(東京憲政記念庭園内)がある。

資料展示コーナーのご案内

海運資料コーナー:「小樽の歩みと日本郵船」をテーマに、明治・大正期の海運を中心とした小樽の発展経過と日本郵船に関する資料を展示しています。

国境画定会議資料室:国境碑(模型)、国境碑拓本のほか、画定会議や現地における作業などに関する写真や資料を展示しています。
修復資料室:漆喰剥離状況、擬石作成過程など、修復工事において得られた貴重な資料を展示しています。

ご案内

開館時間:午前9時30分〜午後5時(平成30年11月3日(土)まで)

休館日:火曜日(祝日の場合開館、翌日以降の最も近い平日に振り替え)と年末年始(12月29日から1月3日まで)

入館料:一般300円、高校生・市内にお住まいの70歳以上の方150円、中学生以下無料

※団体利用(20人以上)の方は2割引です

※身体障害者手帳、療育手帳又は精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方、およびその介護者の方は無料です

共通入館券

総合博物館本館、運河館、重要文化財旧日本郵船株式会社小樽支店のうち2館に入館できます(二日間有効)

一般500円、高校生・市内在住の70歳以上の方250円

手宮洞窟保存館にも入館できます(有効期間内に限る)

定期入館券(年間パスポート)

総合博物館本館、運河館、重要文化財旧日本郵船株式会社小樽支店に何度でも入館できます(一年間有効)

一般1,000円、高校生・市内在住の70歳以上の方500円

手宮洞窟保存館にも入館できます(有効期間内に限る)

交通

JR小樽駅下車徒歩約20分
小樽駅前より中央バス2、3系統、錦町停留所下車徒歩3分

地図(※外部サイト、グーグルマップが開きます。)

重要文化財旧日本郵船株式会社小樽支店
〒047-0031小樽市色内3丁目7番8号電話0134(22)3316

お問い合わせ

教育委員会教育部 生涯学習課
住所:〒047-0034 小樽市緑3丁目4番1号
TEL:0134-32-4111内線7531・7532
FAX:0134-33-6608
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