おたる文学散歩 第5話

公開日 2020年10月21日

更新日 2021年01月14日

第5話 岸 誠 詩碑 友情のいしぶみ(広報おたる平成18年11月号掲載)

 岸 誠(きしまこと)氏は昭和4年小樽に生まれ、稲穂小学校、庁立小樽中学校、小樽経済専門学校(現小樽商科大学)に在学、卒業後は海運業界で働き、業界の国際組織である国際海運同盟議長に就任。その在職中、病に倒れ、平成7年12月に逝去しました。

岸氏は早くから詩の創作を行い、詩集『海峡』、『ともづな』、『北風の港』などを発表。その作品の多くに、長く離れている故郷、小樽へ寄せる切々とした思いが込められています。

岸氏は、詩人としては無名で、それを知る小樽の人もわずかでした。けれども、岸氏の晩年に親交があり、その純朴な人柄と詩心に打たれ、詩集『北風の港』の出版にも協力をした在東京の医師、二宮 陸雄(にのみや りくお)氏は、不慮の病で亡くなった岸氏を惜しみ、小樽に小さな碑を建てたい、と考えたのです。二宮氏はそれまで縁のなかった小樽に、何度も足を運ぶことになりました。けれども、詩碑を建てるのにふさわしい場所が、どうしても見つかりませんでした。

何度目かの小樽来訪で、やはり碑の場所を求めて街中を歩いていた二宮氏は、小樽駅そばの船見坂を上りつめていました。そこで偶然に出会ったのが、坂上にある日光院の宮本成雄(みやもとせいゆう)住職でした。宮本住職は、岸氏と二宮氏の友情に強く打たれ、寺の境内の一角に碑を建てることを快く許されたのです。

こうして平成9年5月24日、岸誠氏がこよなく愛した小樽の街と港を一望する日光院境内に、その詩碑が建立されました。

 

「小樽 わが町」  岸 誠

 

遠くのぞめば風の音がきこえる

風のむこうに波立つ海がある

どこまで行っても決して平坦でない道

めぐりあうのは若き日の魂のかけら

こだまする遠い海鳴り

 

 日光院境内から市街地を望む 日光院境内の岸誠詩碑

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