公開日 2020年10月27日
更新日 2025年03月10日
(広報おたる平成17年8月号掲載)
バス停「オタモイ団地」から海に向かって進むと、左はオタモイ海岸、まっすぐ進むと山中海岸と表示があります。未舗装の道をしばらく行くと、車道は行き止まりとなり、左手には神社があります。海岸への下り口では祝津からの小樽海岸自然探勝路が交わっています。ここの標高は約百六十メートルあり、ここから山中海岸へ下りていく坂道が今回ご紹介する山中海岸の坂です。
山中海岸へ下るこの道は、坂道と言うよりむしろ山道という雰囲気で、急な斜面を左右に蛇行しながら下りていきます。周りはうっそうとした森で、季節が合えば下草の花々を楽しむことができます。頭上から降ってくる鳥のさえずりを聞いていると、海岸に行くというより、森の中をさまよっているような錯覚すら覚えます。
道は途中で何カ所か分かれていますが、どちらを選んでもいずれはまた一緒になります。赤土の道は、雨のあとは足もとが滑りやすくなります。
20分ほどで海岸近くの平坦な草原に出ます。ここは背丈ほどの草をかき分けて歩かなければならない一番の難所です。前方の見えない草原を抜けると急に視界が開けて、日本海が目の前に広がります。ここが山中海岸です。大小の岩が転がり、海面から多くの岩が顔をのぞいています。かつて漁業に使われていたものなのでしょうか、小屋の跡や、侵食されたコンクリートの 残骸(ざんがい)が海中に残っています。

海岸には浅い潮だまりが広がっていて、家族での磯遊びには絶好の場所です。徒歩でしか行けないためか、訪れる人も少なく、いつも静かな場所です。皆さんも子どものころ、親に連れられて来たことがあるのではないでしょうか。
海岸を右に百メートルほど歩くと、海岸に迫るがけから流れ落ちる一条の滝があります。冷たくきれいな水の流れ落ちるこの滝は、盛夏でも枯れることがないのだそうです。幕末の探検家松浦武四郎(まつうらたけしろう)が『西蝦夷日誌(にしえぞにっし)』に記録した、チャラセナイという地名はこの滝を指すのでしょうか。
磯遊びで疲れた帰りの上り坂はこたえます。幼い子どもを連れて行くと、疲れてぐずる子を背負わなければなりません。一歩一歩坂を上ると、わが子の甘酸っぱい汗のにおいに、自分も親に背負われて帰った幼い日を思い出すのです。