公開日 2021年06月27日
更新日 2021年08月26日
色彩の饗宴巨匠たちの絵とパレット
趣旨
パレットは絵具を混色するための板で、絵を描くために必要不可欠なものです。油彩用の素材としては、合成樹脂、大理石、御影石、木、そして現代では使い捨ての紙パレットまでが登場しています。形も、一般的な楕円形から、長方形、巨大なものから持ち運びに便利な二つ折りの小型サイズのものまで、画家の志向と制作環境によって選び方は様々です。
パレットは画家自らの肖像画であるかのように、長年の使用で絵具の層が厚く盛り上がり、その使い方を見ると画家の仕事ぶり、人間性や性格までもが反映されているようです。
画家が公に発表する絵画作品のキャンパス上と、本来は創作のための秘密の道具であるパレットとは、同じ絵具がまさしく同一に置かれ、両者は互いに緊密に結びついた関係にあります。そうしたことから、発展的な意味において、画家が用いる絵具・色彩の総体を「パレット」と呼ぶこともあるほどです。
本展では、ピカソ、マティス、ユトリロなど海外の巨匠たちから、安井曾太郎、梅原龍三郎、東郷青児、林武ら日本洋画の大家、ならびに小樽出身の小寺健吉、中村善策、国松登ら北海道ゆかりの画家たちまで、画家の制作の素顔であるパレットと絵画を笠間日動美術館のコレクションからご出品いただきます。
国内外の大家が勢ぞろいし、それぞれの個性的な「パレットと絵画」を一対のものとして紹介するユニークな展覧会となります。
会期
平成26年5月17日(土)から7月21日(月・祝)まで
小樽の女流画家たち-庁立小樽高女の系譜
趣旨
小樽には、戦後間もない頃から活躍した藤本俊子・森本光子・加藤清江・高橋好子・中島光榮など、幾人もの女性画家たちがいます。
彼女たちが学んだ庁立小樽高等女学校(現在の小樽桜陽高校)では、三浦鮮治の小樽洋画研究所に学び、のちに小田観螢夫人となった小田(本間)重子が美術指導にあたっていました。また、その後には画家としても指導者としても高く評価された東京美術学校出身の鈴木伝が美術教師として赴任し、多くの人材を輩出しました。
小樽の女流画家たちは、日常生活や子育ての中から題材を選んだり、近郊の風景や思うことなどを女性ならではの視点でとらえ、道展を足がかりに中央の公募展へも果敢に出品しており、中には海外へ足を伸ばすたくましい画家も現れています。
本展では、北海道女流画家のパイオニアとして後進に多大な影響を与えた、庁立小樽高等女学校出身のたくましい女流画家たちの生き様と作品を紹介します。
会期
平成26年7月26日(土)から9月15日(月・祝)まで
〜親子のための展覧会〜伊藤英二木のおもちゃ展
趣旨
伊藤英二(1932-2012)は留辺蘂町生まれ。
中学校教諭として障がい児学級に携わり、教育方法として木のおもちゃを取り入れたのをきっかけに、1982(昭和57)年には自宅におもちゃの家「といこうぼう」を作り、木製玩具作家として本格的に制作に打ち込むようになりました。小樽でも1994(平成6)年に旧青少年科学技術館において特別展が開催されましたが、会場には毎日多くの子どもたちの歓声があふれていました。
伊藤英二の作品は丈夫な作りで、木肌そのものの色を生かした寄木の表現方法や丸みを持たせたデザインが特徴で、捨てられてしまいそうな木のかけらまでをも削り、組み合わせ、磨き上げながら作品として仕上げていくうちにその作品には生命が与えられていきます。
「見て・触れて・遊んで・作って」という実体験機会を大事にしながら制作活動を続け、1997(平成9)年に「森の美術館木夢」(西興部村)の館長に就任するとともに、木の温もりと優しさを通じて地域文化を育んできたことが評価され、2005(平成17)年には北海道地域文化選奨を受賞しています。
本展は、木の温もりを大事にした伊藤英二の作品の一端に親子で触れていただき、作品を見るだけではなく、肌を通して鑑賞していただくことを目的とした展覧会です。
会期
平成26年10月18日(土)から12月28日(日)まで
谷口明志インスタレーション「線の虚構」
趣旨
小樽出身の谷口明志は、大学在学中から道展への出展を続け、新人賞、佳作賞、会友賞の受賞歴を経て、会員として活躍しています。また、公募展のみならず、自ら組織するグループ展「plus1」では、札幌、ニューヨーク、大邱、ハノイなど、海外展にも精力的な活動を行っています。
近年の谷口作品はインスタレーションの傾向を強めており、厚みのない無彩色の板や金属を組み合わせ、平面でありながら立体的な効果を演出しています。また最新作では、二次元から線が飛び出してくるような虚構の世界を作りだし、線の強弱を縦横に走らせ、空間全体を造形作品に見立てています。
本展では、革新性の高い表現が注目される美術家・谷口明志の絵画空間に対する思考を明らかにするとともに、最新のインスタレーション作品を展覧します。
会期
平成27年1月10日(土)から3月15日(日)まで
小樽水彩画会歴代会長の風貌
趣旨
小樽水彩画会は、宮崎信吉によって1948(昭和23)年に10名の会員で創立され、水彩画の普及・啓発活動や会員の絵画に対する見識を深めるための互評会やスケッチ旅行など、その活動は60年を超える長い歴史を誇っています。
小樽で広告業を営んでいた宮崎は、その卓越した描写力によって彗星のごとく市展に登場し、道展、日本水彩画会展でも受賞を重ねる一方、その温かな人柄で人望を集め、道展の今田敬一や繁野三郎といった重鎮も小樽水彩画会に賛助出品して会を支えました。
宮崎の亡き後は、すでに道展会員として活躍していた中島鉄雄が受け継ぎました。中島の不透明水彩を用いた斬新でダイナミックな筆致には、宮崎とは異なる強烈な個性があります。
3代目会長の森田正世志は繁野三郎の影響を受けた、透明水彩技法を駆使する巧みな表現者です。色を濁らせず透明なセロファンを重ねたような美しい色彩を特徴とし、透明水彩技法を貫くことを信条としましたが、これ以降小樽水彩画会の表現の主流は、この透明水彩技法に傾斜していきます。
その後は、小樽のなかでも特に運河をモチーフとした坂東義秋、漁村で働く人々を温かいまなざしで描いた山本泰夫、小樽のみならず海外の歴史遺産にテーマを見出した笹川誠吉へと会長のバトンは引き継がれ、現在に至っています。
本展では、戦後の水彩画の普及・発展に貢献した小樽水彩画会の歴史を顧み、歴代会長の作品を展覧してその系譜をたどるものです。
会期
平成27年3月21日(土)から4月19日(日)まで