公開日 2020年10月16日
更新日 2023年12月25日
2016年(平成28年)2月1日、WHO緊急委員会が開催され、小頭症及び神経障害の集団発生に関する「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態」(PublicHealthEmergencyofInternationalConcern(PHEIC))が宣言されていましたが、同年11月18日に終了が宣言されました。しかし、国外ではありますが、現時点においても流行している地域があるため、引き続き予防対策を行うことが重要です。
ジカウイルス感染症とは
ジカウイルス感染症は、蚊を媒介して感染する病気です。
アフリカ、アメリカ、南東アジア、西太平洋地域での発生が確認されています。(ただし、標高2000m以上の地域はリスクが低いとされています。)WHOでは、ジカウイルス感染症の地理的分布をカテゴリー1から4に分類しています。厚生労働省では、カテゴリー1とカテゴリー2を流行地域として注意を呼びかけています。詳しくは、厚生労働省ホームページ「ジカウイルス感染症の流行地域(外部サイト)」を御覧ください。
日本国内では、2013年以降、海外の流行地域で感染し、発症した症例(輸入症例)がありましたが、日本国内で感染した症例はありません。
ジカウイルス感染症は、一般に蚊に刺されることによって感染する疾患です。ヤブカ属のネッタイシマカやヒトスジシマカが、ウイルスを媒介することが確認されています。ネッタイシマカは、日本には常在していませんが、ヒトスジシマカは、日本のほとんどの地域(秋田県および岩手県以南)でみられます。どちらも日中に活動し、ヤブや木陰などでよく刺されます。国内の活動時期は概ね5月中旬-10月下旬頃までです。
- 【用心編】感染症の運び屋蚊からバリアーで身を守れ!(外部サイト)
- 【発生源編】ジカ熱・デング熱の運び屋ヒトスジシマカの発生源を叩け!(外部サイト)
- 【学校編】ジカ熱・デング熱の感染源ヒトスジシマカに注意!(外部サイト)
その他、出国、入国用ポスター・チラシ「「ジカウイルス感染症」が流行しています!」については、厚生労働省ホームページ「ジカウイルス感染症について」(外部サイト)を御覧ください。
パンフレット
感染経路と予防法
【原因】
フラビウイルス科フラビウイルス属に属する「ジカウイルス」です。
潜伏期間は、2-12日(多くは2-7日)と言われています。
【感染経路】
1.蚊を媒介した感染
ウイルスに感染した患者を蚊が吸血すると、蚊の体内でウイルスが増殖し、その蚊が他者を吸血することでウイルスが感染します。
※基本的に、感染したヒトから他のヒトに直接感染するような病気ではありません。
2.性行為による感染
流行地から帰国した男性から、発症前に渡航歴のないパートナーへ性行為を行うことにより感染した事例が報告されています。
3.母子感染(胎内感染)
妊婦のジカウイルス感染が小頭症等の先天異常の原因になることが確認されています。
【予防法】
1.蚊に刺されないように注意しましょう。
特に、海外の流行地にでかける際は、長袖、長ズボンの着用が推奨されます。また蚊の忌避剤なども有効です。
また、国内では、「ディート」や「イカリジン」を成分とした忌避剤が市販されています。これは、中南米の蚊にも効果があるとされています。製品の
用法・用量、使用上の注意を守って使用しましょう。
2.性行為による感染を予防しましょう。
多くのジカウイルス感染症が不顕性感染です。流行地に滞在中は、症状の有無に関わらず、性行為の際にコンドームを使用するか、性行為を
自粛しましょう。また、流行地域から帰国した男女は、症状の有無にかかわらず、少なくとも6か月、パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中、性行為の際に、コンドームを使用するか性行為を控えることを推奨します。
※不顕性感染:ウイルスに感染したにもかかわらず、感染症状を発症しない状態のこと。
※WHOは、ジカウイルスに関する検討に関わりなく、他の性行為感染症を予防し、望まない妊娠を避けるために、より安全な性行動(正しいコンドーム使用を含む)を推奨しています。
妊娠中、及び妊娠予定の方へ
妊婦及び妊娠予定の方は流行地域への渡航を控えた方が良いとされています。やむを得ず渡航する場合は、防蚊対策をすることが重要です。
また、流行地から帰国した女性は、最低8週間(男性に症状が見られた場合には6か月)は妊娠を控えることが推奨されます。
※現時点では、唾液、尿、母乳を介して感染した事例の報告はみられていないため、WHOは母乳栄養を推奨しています。
症状と治療
軽度の発熱、発疹、結膜炎、筋肉痛、関節痛、倦怠感、頭痛などが主な症状です。これらの症状は軽く、通常、2-7日続きます。
感染して全員が発症するわけではなく、症状がないか、症状が軽いため気付かないこともあります。
中には、ジカウイルス感染症がギラン・バレー症候群の原因となることがわかっており、急性脊髄炎や髄膜脳炎を合併した事例もありますが、死亡はまれです。症状が悪化した場合は、医療機関を受診してください。
ジカウイルスに対する特有の薬は見つかっていません。対症療法となります。通常は比較的症状が軽く、特別な治療を必要としません。
海外の流行地域で蚊に刺されたら
すべての蚊がジカウイルスを保有している訳ではないので、蚊に刺されたことだけで過度に心配する必要はありません。
心配な場合は、帰国した際、空港等の検疫所で御相談ください。また、帰国後に心配なことがある場合は、最寄の保健所に御相談ください。
なお、発熱などの症状がある場合は、医療機関を受診してください。
関連リンク
ジカウイルス感染症に関するQ&A(厚生労働省)(外部サイト)
蚊媒介感染症専門医療機関一覧(一般社団法人日本感染症学会)ジカウイルス感染症 一般の方へ(外部サイト)
蚊媒介感染症専門医療機関一覧(一般社団法人日本感染症学会)ジカウイルス感染症 医療機関の方へ(外部サイト)
Zikavirus(WorldHealthOrganization)(外部サイト)
医療機関の皆様へ
2016年(平成28年)2月15日から、ジカウイルス感染症が、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)の四類感染症、検疫法の検疫感染症に追加されました。これにより、医師による保健所への届出が義務となり、検疫所での診察・検査、汚染場所の消毒等措置が可能となりました。
臨床症状や検査所見から、ジカウイルス感染症の患者を診断した場合には、直ちに小樽市保健所に連絡をお願いいたします。
また、必要な検査は、北海道立衛生研究所にて行いますので、疑われる症例がありましたら保健所へ連絡の上、下記のとおり検体採取について御協力をお願いいたします。
【連絡先】
小樽市保健所健康増進課結核・感染症サブグループ
電話:平日22-3110夜間・休日22-3117
【参考】
診断について
蚊媒介感染症の診断ガイドライン(4版)(厚生労働省)(外部サイト)
※ジカウイルス感染症診療Q&A(最終更新:2017年3月13日)[PDF:4.26MB]
診療体制について
届出基準について
厚生労働省ホームページ「感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について」(外部サイト)
ジカウイルス感染症を疑う症例の要件
次の(1)-(3)に該当する場合、ジカウイルスへの感染が疑われるため、ジカウイルス感染症の鑑別診断の対象となります。ただし、蚊媒介による国内発生を疑う場合は、(1)、(2)をおこし得る他の疾患を除外した上で、(3)、(4)の条件は必須ではありません。
(1)「発疹」又は「発熱(※1)」を認め
(2)「関節痛」、「関節炎」又は「結膜炎(非滲出性、充血性)」のうち少なくとも1つ以上の症状を認める
(3)流行地域(※2)の国への渡航歴があり、出国後概ね12日以内に上記の症状を呈している
(4)発症前概ね2-12日の間に(1)-(3)を満たす男性との性交渉歴がある
※1発熱は、ほとんどの症例で38.5度以下との報告がある
※2流行地域につきましては、最新情報を適宜ご確認ください。(厚生労働省ホームページ「ジカウイルス感染症の流行地域(外部サイト)」参照)
流行国・地域の周辺の国・地域においても、未確認ながら流行がみられれる可能性もあることに御注意ください。
行政検査に必要な検体
検査に必要な検体は、発熱や発疹等の症状のある時期(急性期)に採取したものです。血清と尿の両方が望ましいです。
(1)血液
採取:全血(3ml)
※ウイルス分離検査や遺伝子検査には、血清が検体とされますが、血清よりも全血(抹消血液)が適しているとされています。(冷蔵保存)
保存:採血から1週間以内に検査が可能な場合には、4℃で冷蔵保存となりますが、
1週間を越える場合には、凍結保存となりますので、保健所に必ず御相談ください。
※ただし、一度解凍したものを再度凍結した検体は、検査適応外となります。
(2)尿
採取:スピッツ管1本(数ml)
保存:冷蔵