公開日 2023年07月14日
更新日 2024年10月10日
概要
令和5年、小樽市総合博物館本館で展示していた電気機関車(ED75形501号とED76形509号)2両で、高濃度PCB含有の変圧器とコンデンサの存在が確認されたため、それらを取り出し、専用処理施設に移送し処理を行いました。この2両の電気機関車には、高濃度PCB以外にも低濃度PCB機器やアスベスト(石綿)を含有する機器が存在していました。それらの除去のため車両の解体をして作業を進めましたが、車両の一部を保存することができたので、今後は部分展示について検討を進めてまいります。
電気機関車の解体及びPCB機器の除去について
PCBとは、ポリ塩化ビフェニル化合物の総称で、電気機器用の絶縁油などに利用されていました。毒性が強く、人体に蓄積することで様々な症状を引き起こすことが報告されています。PCBが大きく取り上げられる契機となったのは、昭和43年に健康被害を発生させたカネミ油症事件があります。PCB特別措置法(平成13年施行)により、適正な処理が求められているために、早急に作業を進めなければなりませんでした。
PCB機器除去のために車両の解体が必要だった大きな理由は、事前調査で判明していた大型変圧器や大型コンデンサ以外にも、昭和40年代に製造された当該車両にはPCB含有の可能性がある機器が数百点あると指摘されていたそれらを早急に取り出す必要があった点です。PCB含有機器については設計図面だけでは判断ができず、迅速かつ確実に全てのPCB機器を取り除くためには、解体が必要であると総合的に判断しました。さらに、健康被害をおよぼすアスベスト(石綿)の存在も判明していたために、それらの関連機器の除去作業も行う必要がありました。
作業は、令和5年7月から始め、同年10月には完了しました。結果として、設計図面にはない台車の改造部分からも大量の高濃度PCB機器が発見されるなど、解体しなければ発見されなかったであろう機器が多数確認され、最終的には高濃度PCB機器は286点760kg(みなしを含む)、低濃度PCB機器は519点7,722kg(みなしを含む)が除去されました。
電気機関車の展示施設整備について
電気機関車2両からPCB機器を除去するために行った解体作業の結果として、ED75形501号は前頭部と後頭部及び内部機器と台車を取り除いた中間部、ED76形509号は前頭部が保存されている状況です。令和6年度においては、ED76の前頭部の展示施設整備を行う計画です。ED75については、令和7年度に展示整備するために検討作業を進めています。
関連ページ
対象となった電気機関車について
ED75形501号は、昭和41年製造で、ED75形500番台の1号機です。小樽から滝川間の北海道交流電化用の試作機として1両のみが作られ、平成22年にJR北海道から準鉄道記念物に指定されました。またED76形509号は、昭和43年製造で、北海道での電化の幕開けとともに活躍した車両です。いずれの車両も昭和61年に廃車になり、その年に当地の北海道鉄道記念館に搬入され、そして小樽交通記念館を経て、現在の小樽市総合博物館へ引き継がれて展示されてきました。電気機関車ED75のいろいろな写真[PDF:350KB]
電気機関車ED76のいろいろな写真[PDF:463KB]