公開日 2020年11月04日
更新日 2021年03月31日
症例1
・症例
A氏(90歳男性)
・病名
胃がん(胃全摘術後)、胆管がん(胆管全摘術後)、糖尿病
・家族背景
長女と二人暮らし。長男は市内在住。妻は7年前脳梗塞で死亡
・経過
平成30年1月胆管炎による発熱、市内の病院にて入退院を繰り返し、予後半年と告知される。本人は「家に帰りたい」と希望。
家族も「母が亡くなる時には病院に運ばれてすぐに亡くなり、何もしてあげられなかった。父にはできるだけのことをしてあげたい」
「最期を自宅で過ごさせてあげたい」と在宅を希望された。
以前、A氏の親戚をBクリニックの在宅診療で引き受け、B先生が自宅で看取った。そのときに導入したのが、「おたるワンチーム」だった。
訪問診療と、訪問看護、福祉用具貸与事業所、ケアマネージャーなどの多職種間とご家族の間で情報を細かくやり取りし、本人と家族に寄り添い
ケアをした。その結果、自宅でその方らしい時間を家族とともに過ごし、最期のお別れをして旅立たれ、家族も悔いなく見送りができた。
そのときの様子をA氏の家族が知っていたため、「父も最期はあんな風にみんなに見守られて自宅で過ごして、安らかに見送ってあげたい」と
希望され、「おたるワンチーム」を利用しての在宅療養生活が始まった。
自宅に帰ってからは、貧血によるふらつきや下肢の浮腫などの問題や、様々な症状が出てきたときの家族の不安などがあったが、
訪問診療スタッフ、ケアマネージャー、デイサービス、訪問看護間での情報共有により、苦痛緩和とできる限り本人の希望に沿った
生活ができるように援助した。家族は多職種間のやり取りをみて、多くのスタッフに支えられていると実感されたことと思う。
そうして2カ月間の在宅生活は、娘に食べたいものを作ってもらったり、デイサービスに行って大きなお風呂にゆっくり入ったり、
囲碁を楽しんだり、息子とドライブに行ったりと、穏やかで有意義な時間を過ごされた。
最終的には、病院に入院し亡くなっため、家族が希望されていた自宅での看取りはできなかったが、
「入院する」ことを決めたのはA氏が「迷惑をかけたくない」という家族へのやさしさからであった。
お互いを思いあいながら、本人・家族ともに満足し、大変安らかに迎えられた最期だった。