公開日 2021年06月27日
更新日 2024年09月28日
小樽洋画研究所と中村善策
趣旨
「小樽洋画研究所というのが、私の絵画修業の第一歩である」と中村善策は記しています。
小樽洋画研究所は、1916年に青年画家三浦鮮治が後進のために自宅のアトリエを開放したもので、ここに山崎省三や工藤三郎らが加わって若手の啓発にあたっていました。
小樽実業補習学校を卒業したばかりの中村善策は、昼間は海運会社に勤務しながら夜間は毎日研究所に通い多くの友人を得ましたが、研究所に通い始めてから2年後に神戸へ転勤となります。
神戸では絵とは離れた日々を過ごしましたが1922年に小樽へ戻ることとなり、第二の研究所生活を再開できることとなります。
小樽へ戻ってからの中村善策は、文芸雑誌『白樺』に掲載されていたセザンヌに魅了され、仲間たちとともに研究を始めていますが、この猛烈に勉強した第二の研究所時代が二科展入選の素地を作り、中村善策のその後を決定づけたといえるでしょう。
本展では、中村善策の出発点である小樽洋画研究所時代に注目し、ともに研鑚しあった作家たちとともに、知られざる中村善策の一面を展覧します。
会期
平成23年4月2日(土)から9月19日(月・祝)まで
中村善策コレクション名作選1「ふるさと」
趣旨
中村善策は、原点であるふるさと小樽の風景を生涯描き続け、「山あり、丘あり、坂あり、平地あり、岬あり、海。その海の色だけでも我々は実に恵まれるのである。」と、その題材の豊富さを記し、まるで風景画家のために提供されたような街であると、描く喜びを語っています。
本展では、圧倒的に多くの代表作が生み出された小樽の風景に限定して、主たるモチーフとなった「張碓」「奥沢水源地」「花園公園」「運河」などを展覧します。
会期
平成23年9月23日(金・祝)から平成24年4月19日(木)まで
中村善策コレクション名作選2「1950〜60年代画風の完成」
趣旨
1960年代に至り、中村善策の作品は平面化、様式化が進み、現場の風景を超越して大きなデフォルメが加えられていますが、それと同時に豊かな色彩の饗宴が見られ、明快な色面による季節感の表現はその風景画の大きな特徴となりました。
中村善策の作品を愛好する者の多くがこの時代の作品を支持し、また、後輩たちは尊敬の念を込めてその独特の構図を「善策張り」と呼びました。
本展では、1950〜60年代に注目し、北海道、東京、長野など各地の風景を比較しつつ、圧倒的に多くの代表作が生み出された画風の完成期を紹介します。
会期
平成24年4月21日(土)から9月17日(月)まで
中村善策コレクション名作選3「山のある風景」
趣旨
中村善策は「山岳画家」ではありませんが、その風景画のほとんどに山が現れ、また、山そのものの存在ではなく山中で描いた作品も多く存在しており、多くは、都会を離れた里から見た山のある風景と呼ぶことができます。
1944(昭和19)年の信州疎開以降、中村善策は足しげく長野を訪れて制作活動を行ないましたが、山の高低や名山か否かにかかわらず、北アルプスの頂や山裾が作品構図上必要な場所に位置を占めています。
また、かつての疎開地に近い松本から列車に乗り、木崎の駅から木崎湖畔に下りた場所には中村善策の定宿がありましたが、そこは北アルプスの一部が湖面に美しく反映する場所であり、中村善策はそこに広がる風景を繰り返し描いています。
本展では、古来の日本で風景画を「山水」とよんだように、日本の風景画にとって重要な「山のある風景」を、中村善策の信州作品や北海道へ帰省するたびに描いた各地の山のある風景を通じて紹介します。
会期
平成24年9月22日(土)から平成25年6月30日(日)まで
中村善策名作選「故郷小樽をみつめて」
趣旨
中村善策の風景画の魅力とは、華麗な色彩、動きのある構図、スケール感にあるといえますが、そのような特徴が最初から備わっていたわけではありません。
戦争疎開の期間を信州で過ごすなかで、風景画に自分の世界観を織り込むことを自らに課し、写生に近い風景画であったものが、戦後は実景に相当な変革を加えて絵画化されており、1960年代からはさらに平面的な表現へと進み、色彩も明るさを増していきました。
中村善策は東京での活動を続けながらも心では小樽を思い、年に1度は小樽に帰郷して自身の原点であるふるさと小樽の風景を描き続けましたが、故郷小樽を見つめる目には絶対的な信頼と愛情があり、決して機械的な技巧に陥ってはいません。
本展では、中村善策の1930年代から80年代までを概観し、彼が生み出した独創的な風景画の変遷を、小樽を描いた作品により紹介します。
会期
平成25年9月22日(日)から平成26年5月11日(日)まで
中村善策コレクション名作選「信州」
趣旨
1937年に一水会展で昭和洋画奨励賞を受賞し、同会を拠点として毎年出品を続けていた中村善策ですが、1945年4月に東京空襲に遭い、急遽手回り品だけを持って信州明科(現・安曇野市)へ避難せざるを得ないこととなり、その間にアトリエは全焼、作品200点ほどが焼失してしまいました。
以後、4年半に及ぶ疎開生活が始まり、都会の喧騒から離れた中村善策は風景そのものに没入するように観察を深め、一日中野外で写生に徹する日々を送りますが、この間に描かれた信州風景には共通して色彩に透明感があり、観る者に静寂と安らぎをもたらしてくれます。
また、疎開での収穫はモチーフだけに限らず、優れた人物との出会いもありました。
離京して偶然同宿となったアララギの歌人、岡麗は、中村善策を短歌の世界に導いた人物ですが、岡は空襲で作品全てを失った中村善策を励まし、再び絵筆を握る力を与えた恩人とも言えるでしょう。
1950年に岡が信州でその生涯を終えたのを機に中村善策は帰京を決意しますが、信州は第二の故郷として重要なモチーフとなっていきました。
信州は中村の戦後の飛躍にとって重要な場所であり、この時期に風景画に自分の世界観を織り込むというテーマを課したことが、戦後再出発の原動力となったのです。
本展では、中村善策の二大モチーフと呼ばれる小樽と信州のうち、「信州」を描いた作品に焦点を当て、実作品により変遷をたどるものです。
会期
平成26年7月26日(土)から平成27年4月19日(日)まで
小樽運河・いまむかし
趣旨
小樽運河は、かつて経済の隆盛期には、はしけや荷役の人々の姿とともに独特の風情を醸し、古くから小樽を象徴するものとして画家たちのモチーフになってきました。小樽に生まれ、運河に親しんで育った画家はとりわけ生き生きとした作品を残し、「運河画家」の異名で呼ばれる者もいました。やがて物流拠点としての役割を終えても、運河は人々の労働の証であり、心のふるさととして重要な存在であり続けました。
1960年代に運河埋め立ての方針が示されたことで、むしろ蓄積された汚れや澱みのなかにも独特の美があることを見出し、それを絵にする画家が多数を占めました。デザイナー藤森茂男は、潮まつりなどの街づくりの中心となって活躍し、後半生は運河保存運動に全ての情熱を注ぎ、杭打ちが始まる直前の1985年に集中して運河を描いた人です。藤森の絵の制作は、運河を全面保存し後世に残したいという運動のもはや最終手段であったことに、他と一線が引かれます。
やがて半分が残された運河周辺には、倉庫を活用した商業施設やガス灯などが整備され、現在は多くの人々が訪れる観光スポットとなりました。様変わりした小樽運河に失望し、運河を描かなくなった画家がいる一方で、現代の視点による新たな題材として運河に取り組む画家がいることも確かです。
本展では、運河を見つめてきた画家たちの作品を過去から現在まで網羅し、3部構成により展覧します。この街に受け継がれてきたもの、彼らが伝えたかったこと、思い描いていた未来は何だったのか、これらの作品から感じ取っていただければ幸いです。
会期
平成27年4月25日(土)から7月5日(日)まで
花ひらく近代洋画の世界
趣旨
日本の近代美術は、明治以後、ヨーロッパの新しい美術運動を咀嚼し、独自に展開していきました。
本展で紹介する梅原龍三郎、安井曾太郎、須田国太郎らが活躍した大正から昭和の時期は、西洋絵画の習得に懸命だった時代からしだいに芸術家の個性が重視されていきました。
この時期、洋画はヨーロッパの伝統的な手法である油彩を用いながらも「日本的」といわれる独自の表現方法が構築されていきます。
個性重視の時代の中、画家たちは「西洋的なもの」と「日本的なもの」の狭間で葛藤しながら独自の表現の獲得を目指しました。
本展では、こうした昭和初期の洋画家たちの葛藤や模索を、社団法人糖業協会のコレクション54点でたどります。
なお、社団法人糖業協会の美術コレクションは、前進である日本糖業連合会当時から始まり、1936(昭和11)年に糖業協会が設立された後も歴代理事長のもとで収集が続けられてきました。
当コレクションは日本近代洋画界を牽引した名だたる画家で構成されており、道内では初公開となります。
会期
平成27年7月11日(土)から9月13日(日)まで
中村善策と故郷小樽
趣旨
東京での活動を続けながら心は小樽を思い構想を練り、年に1度帰郷して自身の原点である故郷小樽の風景を描き続けた。小樽を見つめる目には絶対的な信頼と愛情があり、機械的な技巧には陥っていないのである。斜面に沿って建つ民家の屋根の連なり、様々な樹木が林立し季節感を伝え、急激に下っていく坂道は、大きく弧を描いて広がる小樽港へと繋がる。起伏に富んだ小樽の地形の特徴から汲み取ったダイナミックな動きのある構図である。
本展は、中村善策の1930年代から80年代までを概観し、彼が生み出した独創的な風景画の変遷を、小樽を描いた作品により紹介します。
会期
平成27年9月17日(木)から平成28年1月24日(日)まで
小樽洋画研究所と中村善策3
趣旨
小樽洋画研究所は、1916年青年画家三浦鮮治が上京する平沢貞通から石膏像を譲り受けて、翌年後進のために自宅アトリエを開放したもので、ここに三浦の友人で春陽会の創立会員の山崎省三や、洋行帰りの工藤三郎らが加わって、若手の啓発にあたっていました。この小樽洋画研究所を皮切りに、太地社、裸童社など一連の活動が生まれ、北海道美術の発展の大きな原動力となっていきます。三浦のほか研究所のメンバーであった谷吉二郎、加藤悦郎、樋口忠次郎、桝田誠一はみな道展創立会員であり、大正から昭和初期にかけての北海道美術はここにかかわった者たちの手によって大きく発展していくのでした。
本展は、中村善策の出発点である小樽洋画研究所時代に注目し、ともに研鑽しあった先輩、仲間たちという交流作家とともに、知られざる中村の一面を展覧するものです。
会期
平成28年1月24日(土)から平成28年7月3日(日)まで
中村善策海のある風景
趣旨
中村善策の1930年代〜80年代までを概観し、彼が生み出した独創的な風景画の変遷を、小樽を中心とした「海のある風景」により紹介します。
会期
平成28年7月9日(土)から平成29年2月26日(日)まで
中村善策海のある風景2
会期
平成29年3月4日(土)から平成29年10月22(日)まで
小樽画壇の礎平沢貞通展/三浦鮮治と小樽洋画研究所の仲間たち
趣旨
中村善策とゆかりの深い、平沢貞通・三浦鮮治に焦点を当て、北海道画壇の発展に尽力したそれぞれの業績とその作品を同時代の仲間たちとともに展覧します。2017年は、平沢貞通が小樽に移住して110年、そして没後30年の節目の年となります。
会期
平成29年10月28日(土)から平成30年3月4日(日)
中村善策風景画の四季
趣旨
中村善策の執筆した数々の油絵の技法書のなかから、美術雑誌アトリエ『風景画の四季』(昭和32年発行)に着目し、著作のなかで自らが自作を例示した具体的な作品を実際に展示引用しつつ、その他の収蔵品を加え、四季折々の表現の変化をご覧いただきます
会期
平成30年3月10日(土)から平成30年5月22日(火)
中村善策-画風の変遷
趣旨
中村善策の初期から、戦争疎開を経て、戦後の飛躍に至るまで、その生涯にそって画風の変遷を展覧するものです。
会期
平成30年5月23日(水)から平成30年10月21日(日)
二つの視点_中村善策×伊藤正
趣旨
中村善策と伊藤正は、ともに日展・一水会展を拠点として活躍した先輩後輩の間柄で、家族ぐるみで親しく交流したが、制作の面では互いに異なる主張を持っており、作品は好対照をなしている。
本展では、中村善策と伊藤正の二人の画業を照らし合わせ、それぞれが求めた写実とは何だったのかを探るものです。
会期
平成31年3月2日(土)から令和元年7月15日(月・祝)まで
中村善策「空のいろ、海のいろ」
趣旨
善策の鮮やかな色彩と躍動感のある構図は、スケッチから着彩まで戸外で制作するという信条に起因しています。本展ではその中でも善策の描いた個性豊かな「空」と「水」の表現に焦点を当てます。
様々な姿をみせた空と水の表現に注目して、そのとき善策が感激した風景を、胸いっぱいに感じてください。
会期
令和元年7月20日(土)から令和2年1月12日(日)まで
「風景画家の描く「ひと」」
趣旨
中村善策は日本を代表する風景画家の1人です。「中村善策記念ホール」は美術館の開館当初から熱望され、開館から9年後の1988年に開設しました。今年で開設32周年となり、どこか懐かしく、躍動感のある風景は今も尚多くの市民に愛されています。
善策は誰もが彼を「風景画家」と認めるほど、画業の殆どが風景画です。
善策自身も「人物は苦手」と往年言っていたようですが、記念ホールを持つ小樽美術館のコレクションには、人物が描かれた作品が少なからず存在します。
お世話になった人、依頼されて描かれた人、風景画の中に小さく描かれた人-描かれた人に焦点を当てることによって、「風景画家・中村善策という人」の新たな魅力に迫ります。
会期
令和2年1月18日(土)から令和2年7月12日(日)まで
「さあ風景画を始めよう」
趣旨
善策は「写生に出かける喜びは、何十年経っても同じこと、ちっともそれに変わりありません。いつもいつも初心の喜びを味わっています。」と語るほど、屋外で製作することを愛し、晩年になっても全国各地に写生旅行に出かけていました。
そんな写生の魅力を多くの人に伝えるため、善策は多くの技法書を執筆しています。美術雑誌『アトリエ』では、頻繁に風景画や油絵の特集を担当し、全国のまだ見ぬ後進たちが筆を握ることを後押しました。基本的な道具の使い方から全国各地の写生地の旅行記まで、制作の楽しみを魅力的に伝えた解説は読者に大変好評で、今でも全国に彼を「先生」と呼ぶ生徒たちがたくさんいます。
善策が描いたスケッチと風景画とともに、彼が未来の風景画家たち~あなたに向けたメッセージを感じ取ってみましょう。
会期
令和2年7月14日(火)から令和3年1月11日(月・祝)まで
「さあ風景画を始めよう 第2期」
趣旨
「さあ風景画を始めよう」の第2弾の展示です。パート2となる今回は、劣化の為の修復作業を終え新しくなった作品や中村善策が複数の油彩作品から構図を切り取って生まれた作品などを新たに展示し、プロの風景画家としての制作背景にも迫ります。
会期
令和3年1月16日(土)から令和3年3月21日(日)
「中村善策の前景・中景・遠景」
中村善策の系譜① 運河画家と呼ばれた男 石塚常男
中村善策の系譜② 遥かな時空を超えて 堀忠夫
特別展 画家と娘 岸田劉生〈麗子〉とともに/大正・昭和初期の小樽の画家たち
小川清 街を歩いて
はっきりと貴方の眼でみる ~中村善策の写生と写実~
中村善策と「加賀の北前船主・西谷家」
中村善策ー風景画家のパレット
ミニ展示「はじめまして小樽美術館」
趣旨
本年(2019年)は美術館開館40周年になります。
これを機に、美術館収蔵品の中で中々皆様のお目にかかることのない、
隠れた逸品を1品ずつ紹介いたします。
第4弾は2019年7月28日(日)から10月14日(月・祝)まで
≪河風≫鏑木清方
※本企画最後の紹介です。
過去の展示
第3弾:河井寛次郎≪呉須泥刷毛目茶椀≫
第2弾:中村岳陵≪待春≫
第1弾:横山大観≪月明≫